第八章 舞鬼

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【4時45分】  市ヶ谷の駅に停車した車両から30人の男が降り、職員を全員射殺して防衛庁へ走った。   5分後、30人の男たちは防衛庁正門にランチャーを発射し、門に立っていた自衛官2人を吹き飛ばした。 そのまま右前方40メートル先にあるB棟に突入し、5階建てのB棟にいる自衛官30人全員を射殺した。 5時まであとわずかという時、男たちは航空管制システム室へ入り、レーダーと通信設備を掌握し、2人が無線でその旨を伝えた。 【5時00分】  無線を受けた1人が合図を送り、男たちが占拠したジャパンTVのAスタジオから覆面の男の1人が流暢な日本語で放送を開始した。 「我々は、警視庁、防衛庁、ジャパンTVを制圧し、永田町に核爆弾を設置した。一般の人は早急に非難をしてください。私たちは、日本国代表と交渉をいたします。24時間以内に交渉に応じなかった場合、核爆弾を爆破させる。もし、アメリカ及び第三国が日本に対し協力に動いた場合でも、爆発させる」 ~~~~~~~~~ 【5時10分】  ある部屋に6人の男女が集まって、モニターを凝視していた。そこは、まるで特撮映画に出てきそうな雰囲気のモニターとPC、無線機のある未来的な部屋だった。 「あいつの言っていた通りだったな。まさか、警視庁と防衛庁を攻撃してくるとは予想できなかった」 モニターを見詰めながら、和久井俊が言った。 「ええ、予想以上に大胆ですね」 和久井と同じようにモニターを見ながら、白尾がくもった表情で話し続けた。 「ピストルを撃たない警察、マシンガンを持たない自衛官の国ですから。テロリストにとって簡単な事ですよ」 和久井は席を立ち、腕を組みながら歩き始めた。そして、5人に聞こえるように言った。 「今から、手はず通りにテロ組織を制圧しなければならない」 「それが、隊長がまだ」  川島由美が力なく話した。 「ああ、とにかくあいつが書いたマニュアル通りに動いてくれ」 「はい」 「しかし、やつは本当に戻ってくるのだろうか?」 「大丈夫です。必ず戻ってきます」 と川島由美が自信を持って言った。 「確証があるのか?」 「自分達には解かるんです。もうすぐ目の前に隊長が現れるのが」 と山野啓介が言った。 「よし、私も信じるぞ。さあやつが帰ってくる、準備してくれ」   和久井の言葉に5人の男女が立ち上がり、 「はい」 と返事をして各配置についた。
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