第一章 双鬼

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「うん」 「それで、こっちで動いている赤色の点が、鬼なの」 「鬼?」 「ほら、こっちへ向かっているわ」 鬼が箱崎のほうからやって来るのがわかった。 その姿は、茶色い毛で覆われたライオンくらいの大きさで、人間の顔をベースに口が大きく裂け、牙が伸びていて、頭の両側に角を生やしていた。 「おい、まるで人間の顔をしたライオンじゃないか。こっちに向かってくるぞ」 「大丈夫、手出しはできないわ」 鬼は20メートルくらい近づくと立ち止まり、2本足で立ち上がると3メートル近くの大きさになった。 「やつも危険を感じたようね」 「おい、じゃあどうやって退治をするんだ」 「轢き殺すの」 「何? 逃げたらどうするんだよ」 「大丈夫、首都高から出ることはできないわ、あとは夜野さんの腕しだいね」 「ほかに武器はないのかよ。マシンガンとかミサイルとか」 「あるよ」 「おお、早く言え」 「鬼に向かってライトをハイビームにしてあてると、10秒間だけ動く速さが半分になるの。その時に轢き殺して」 「やっぱりそれかよ」 「さあ、バトル開始よ。それとハイビームであてるのは3回だけね」 「俺はシューティングが苦手なんだよね。できたらロールプレイングがいいんだけど」 魔美は手を伸ばして礼司の前のクラクションを鳴らした。 すると鬼は4つん這いになって方向転換をして箱崎のほうへ逃げた。 「追って」 「はいよ」 鬼のスピードは速く、見る見る離れて行った。 「何やってるのよ」 「もう100キロだ。タクシーじゃきついぞ」 「ああ、ギアが違うわ」 「何?」 「1番奥へシフトを入れると6速に入るのよ。とにかくアクセルを思い切り踏んで」 礼司がアクセルを踏むとタクシーはジェット機のように加速した。 「何じゃこの加速は?」
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