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古代魔術を扱えるのは、それこそ神や悪魔クラスの怪奇だ。
それもただの神や悪魔ではなく。陽嶺や月嶺も及ばない高位の怪奇。
これらの怪奇が厄介なのは、単純な力の差だけではなく“戦闘に特化した怪奇”という特性がある。
単純に戦闘が得意な怪奇は多くいるが、今回は戦闘に“特化”している怪奇だ。
間合いの取り方、武器の扱い、地形の利用、術の発動、攻防の切り替え、他にも様々な部分で戦闘に特化したスキルを持っている。
これらの怪奇は、怪奇としての“格”もさることながら保有している知識の量も膨大で、それに比例して魔術などの分野にも深い知識がある。
厄介な相手だと思いながら、しかしこれだけでは正体など分からない。だが一つだけ分かった事がある。
これだけの術式であれば陽嶺や月嶺だけでなくとも、街の怪奇が存在を感知できるはずだ。
だが気付いたのは陽嶺と月嶺だけ。寺の亡霊達すら気づいていなかった。
『四方の陣』と『五亡星の結界』
素人が作った小規模な物ならともかく、目の前にあるのは大規模かつ洗練された芸術品だ。
本来であれば【俺】も気づいたはず。
それを気づかせないほどの隠密性。
二重防御の内側にある古代魔術は“魔術の存在を隠匿し、その内側を異界とする”古代魔術。
「“秘匿された術(ミステリーアート)”に“神の隠れ家(ゴッドハイド)”の追加効果」
ありえない、そんな言葉が口をついて出そうになる。
だが相手はそれが出来る存在なのだ。
『神様に対して“ありえない”なんて考えが“ありえない”んだよ。バ~カ』
かって一人の魔術師が【俺】にそう言ったのを思い出す。
「懐かしい感じだな」
目の前の魔術に感じた“あの男”の気配。
「“常識外れ(ルールブレイカー)”め」
名前を呟く【俺】の口の端が、わずかにつり上がった。
それはかっての知り合いの通り名だ。
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