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朝。
「ん…」
【俺】は目を覚ました。
(眠ってしまったか)
結局、解析の方は無駄に終わり、具体的な事はほとんど分からなかった。
理解出来たのは、この魔術が“繭”に似ていることぐらいだ。
強力な結界と隠蔽の内側には時間を加速させる術式が確認できた。
結界の中心には大樹。
(桜の木か)
冬の姿のまま、葉も花も落とした木。
「何かありそうだが。なにもできない」
少なくとも今はなにもできない。
目の前の繭を守る強力な要塞を突破するにはそれなりの用意が必要だからだ。
「とりあえずは……学校か」
日常に帰ろうと【俺】がその場から背を向ける。その時。
「待って…」
「ん?」
呼び止められた気がした。だが……
「気のせいか?」
気配はしない。
「ふむ。寝ぼけてるのかもな」
そう思って立ち去る。
「ん」
だが、しておく事があった。
「なんかあんならここに来な」
店の住所と【俺】の名前を書いた紙を置いて行く。
「じゃあな」
そのまま後ろ手に手を振って去った。
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