-影ノ桜-

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そこには一本の桜の木があった。 「ふむ」 寺の奥地には開けた場所があった。 「やはり妙だな」 “人為的”に開かれた広場。 悪魔でもない、神でもない。“人間”が手を加えた広場。 でも 「怪奇の気配がする」 あの時に感じた確かな“神”の気配。 その残り香が生じている。 そして広場の“惨状”は悪い。 「四方に守護獣を配した陣、陣内部に強靭な五亡星の結界。東洋と西洋の二重防御に守られた古代の術式」 全て魔術による物だ。 魔術は、怪奇と同じく“あっち”の世界の技術だが、適合者によっては“こっち”の世界でも使用可能な技術だ。 陰陽道や風水などを東洋魔術、召喚や呪いなどを西洋魔術と言う。そして、それら全ての源流となる古代魔術の三種類だ。 今、目の前にあるのはそれら全ての混合。 まずは第一に桜の木の外周に位置する『四方の陣』 『四方の陣』は東西南北を守護する聖獣。すなわち青龍、白虎、朱雀、玄武の力を借りて作る東洋魔術だ。 この陣の内側にいればあらゆる防御魔術が、要塞級の効力を得る事になる。 例えるならば防弾チョッキで戦車砲の直撃を受け止められる様なものだ。 続いて陣の内側。 これは基本的な五亡星の結界だ。 魔術を学ぶ者が序盤に学ぶ西洋の防御魔術。 初級の術だが、丹念に構成され、四方の陣に強化されているため、核ミサイルの直撃を受けても平気そうだ。 その内側にある古代魔術で作られた術式。 これが一番厄介だ。
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