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腐海の森にヒュンヒュンと響く蟲笛
森と同化しそうな深緑の髪を風に靡かせ、その者は正面の蟲と見詰め合う
数百の足、長い舌が鋭い牙をなぞり、紅い眼孔がその者を捕らえる
「帰れ…此所はお前が近付いてはいけない…」
少しだけ掠れ鼻にかかった声で蟲に語りかける
蟲が赤い眼孔を動かし蒼空を見上げ、キィ――…と何ともいえない鳴き声をあげた
「…そうか…今日は歌が聴こえてこない…お前も心配なんだな…」
その者は蟲笛を廻すのを止めると、同じように蒼空を見上げた
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