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ママのラストは、カウンターに突っ伏くする美作をそう見ていた。酒を出してなんぼとは云え、この商売まずは客を見ることが肝要である。
まだ三十をわずかに超えたラストだが、こと観察力に関しては自信があった。
水割りの入ったグラス越しに携帯を眺めているこの男、名を美作浩二といいその世界では新進気鋭の陶芸家として注目浴びるちょっとした有名人である。
「ねえラストさん、このあと暇かい?」
酒の抜けきらない声で美作が問いかける。
「どうしたのよ、らしくないじゃない」
「らしいってなんだ?僕らしいってのはどういうことを云うんだい。云ってみてくれよお、ラストさん」
美作は管を巻く。
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