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とある場所、とある家に少年がいた。
家…と言ってもその大きさは屋敷と呼べる程はあり、階数的には五階建てぐらいの高さを誇っていた。
その屋敷の屋根は平たく作られていて、学校の屋上の風景とよく似ている。
少年は屋敷の屋上に置いてある椅子に座り、まだ薄暗い空を眺めていた。
時間は申を越え、恐らく五時ぐらい。
右手にグラスを持ち、太陽が顔を出すのを待っていた。
数分の時間が過ぎると、眩しい光が目に入り、少年はうっすらと目を閉じた。
キリッとした鋭い目。
だが、その目の奥に映る優しい瞳。
風と踊る長い髪。
それが少年の第一印象だった。
右手に持ったグラスには赤い液体。
そしてグラスには、トマトジュースですが、何か?と描かれていた。
少年はグラスの液体を飲み始め、少しうっとりした表情を浮かべる。
その右腕には、手首より少し上に刺青のような刻印が刻まれていた。
それは聖霊が宿っている者のみに存在し、それを印すために刻まれる。
聖霊には種類があり、人の形をした聖霊を守護聖霊、それ以外の形をした聖霊を守護聖獣と呼ぶ。
少年の刻まれている刻印は狼。
つまり少年の聖霊は守護聖獣。
グラスに入った液体を飲みきり、少年は軽く吐息を漏らした。
ふと屋敷の全体を見てみると、屋敷の玄関にはフレイ家と描かれていた。
つまりここはアメリカ。
フレイとは、川田亮佑のアメリカでの名前であり、つまりここは川田亮佑の家という事になる。
という事はこの少年は川田亮佑なのだろうか。
否、そうではなさそうだ。
この少年の髪は腰ぐらいまで伸びている。
だが、川田亮佑には長い髪のスキルは無い。
という事はこの少年は川田亮佑ではないというように考えられる。
長い髪と刻印から考えられる者は一人しかいない。
――…カツン、カツン。
不意にそんな音が鳴り響き、誰かが階段を上がって屋上へとやってきた。
「……佳代か。」
少年に呼ばれたのは女の子。
名を佳代と言い、川田亮佑の親友の妹。
「やっぱりここにいたんだ……お兄ちゃん。」
佳代の兄――…流兜は、ただじっと、眩しい朝日を眺めていた。
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