3rd prologue

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リリアは結果的には、三大貴族としての権限を失った。 だが、残る二人には何も影響は無かった。 王族の番犬、ヴィリスは最終的には敵となり、アビスと戦った後に敗れたが、女王や蒼を守ろうとしていた事は高く評価され、剥奪は免れた。 ノアに至っては、言った言葉は負けたの一言。 蒼がまだ亮哉と戦う前、確かにノアと流兜は戦っていた。 そして、ノアがザーグとの戦いに協力したのは蒼が亮哉に負けた後。 故にノアの心は既に三大貴族としての役割を担えないという事は誰も知らない。 だが、孤独を捨てる事のできるこの場所にいる限り、ノアはわざわざ女王を守る義務を担った三大貴族という地位は簡単に捨ててしまうだろう。 それ程までに、ノアは今の立ち位置が気に入っていた。 ストラス家はいなくなったリリアの代わりを用意するらしいが、リリアはそこまで悲しがる事は無かった。 元より親から貰った愛情が無い。 無いが故に歪んでいた心。 空っぽのリリアを変えたのは川田亮佑。 三大貴族としての権限を失っても、リリアは今の暮らしが幸せだった。 孤独でない生活。 たったそれだけなのに、それはリリアには嬉しかった。 当然だが、アメリカでは川田亮佑や流兜達はトップクラスのお尋ね者。 故に身を隠すしかない。 元々亮哉はかなりのお尋ね者だったが、普通に暮らしていた。 だから、無理に隠れる事も無い。 目立ちさえしなければ見つかる事は無いのだから。 もちろんの事ながら、流兜達は学園には行っていない。 行っているのはノアと、川田亮佑の姉妹の二人、詩織と美佳。 詩織と美佳は亮佑と兄弟という事はみんな知っていたが、詩織と美佳は貴族ではない。 貴族でもない者に何かする事は女王はしなかった。 学園へと行く者が減った事で、学園はとても虚しき場所へと変わった。 それでも、絶対に学園に行かなければならない理由はある。 数える程しかないが、ただ流兜達は迂闊には動けない。 故にただひっそりと時がくるのを、川田亮佑が帰ってくるのを待った。 流兜達には川田亮佑が生きているかは分からない。 だが、誰一人川田亮佑が死んだとは考えはしなかった。 川田亮佑は消える前に言った。 必ず帰ってくると。 川田亮佑は嘘はつかない。 それは誰もが知っていたから。
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