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流兜は、朝食を食べようと食堂へ向かった。
屋敷には絶対いると言うぐらいの方程式を持つメイドに適当な朝食を頼むと、食堂に来客が来た。
「咲子か…。どうした?いつもより早いぞ?」
やってきたのは咲子。
川田亮佑が…いや、亮佑が大好きな女の子。
そして、亮佑が唯一好きになった女の子。
時間にして今は約六時。
到底咲子が起きてくる時間とは思えない。
「なんか……起きた。」
よく分からない理由を呟くと、咲子は流兜の近くの椅子に座った。
川田亮佑はここにはいない。
だが、咲子の表情に曇りは無かった。
亮佑は咲子の元に帰ってきてくれると言ったのだから。
亮佑が死んだ時、咲子は自分の部屋で自らの無力さを悔いた。
一生でも悩み続けられる自信すらあった。
光を失った生活が続いた。
でも今は違う。
亮佑は必ず自分の元に帰ってくる。
そう信じているからこそ、その表情に曇りは無い。
「無理して体調は崩すなよ?その時に亮佑が帰ってきたら悲しむだろうし…俺も怒られそうだ。」
流兜は佳代が怪我をしたら限りなく限界まで焦るように、咲子や美佳に対する亮佑の心配は絶えない。
すぐに心配して、でも心配はさせたくなくて…そうやって自分より大切な誰かを守ろうとするのが亮佑。
そしてそれは、心の強さを持って初めてできる事。
咲子は流兜の言葉に小さく頷き、メイドさんの持ってきた朝食を食べ始めた。
「わかったなら……まーいいんだが。」
咲子を信用していないわけではないが、咲子には少し無茶をする傾向がある。
それも含めて体調などを管理させるのが流兜の役目。
亮佑が消える前、亮佑に頼まれた約束。
流兜と咲子は朝食を済ませると、自室へと戻り、何かしらしている間に時は昼頃まで刻まれていた。
昼からは流兜は…いや、アメリカへとやってきた転校生グループは修行。
流兜は屋敷に何故かあるトレーニングルームへと向かい、扉に手をかけると、空気の変化に気づいた。
扉の向こう側から空気が空気を切り裂き、流兜へと向かっている。
つまり、衝撃波とでも呼ぶものが流兜に向かっていた。
流兜は扉を開け、飛んできた衝撃波に軽く息を吹きかけると、衝撃波はそれと相殺され、無くなった。
「息で相殺って……悲しくなるじゃねーか?」
「……ジダンか。」
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