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以降もアウト・イン・アウト&スロー・イン・ファーストのグリップ走行で抜けるS15。 キャリィは相変わらずドリフトで抜けて行く。 (こんなふざけた走りをする奴に秀雄が負けた?それとも三味線引いてる?とっとと真剣になりなさいよ!!) 苛立ちを足に込めて350PSのシルビアを操る。 現代も過去の自動車レースにおいて、変わらぬ事がある。 速く走ること。 以前はタイヤのグリップ力は相当低かった。 コーナーでアクセルを踏めば一気にテールスライドを起こすしスピンする。 それを防ぎ、進入速度を高める技術としてドリフトは生まれた。 それから数十年はラリーでもサーキットでも車を横に向けて走っていた。 滑らした方が速かったからだ。 しかし、時が進めば技術も進む。 タイヤもハイグリップが巷に出回るようになり、ドリフトでは遅い走りしか出来ない時代になっていた。 ストリートではドリフトは健在、遂には公式、世界大会、映画でも取り上げられた。 だが、あくまでもパフォーマンスでの話し。 誰も速く走る為にドリフトをしてはいない。 悪く言えば自己満足のテクニック。 そういう考えが平坂巴にはあった。 彼女は無駄が嫌いだった。 だから彼女はグリップで峠を攻める。 タイヤもSタイヤを履き、サスペンションもグリップ向けのセッティングを施している。 無駄の無いマシンに無駄の無い走り。 彼女のシルビアと彼女のテクニックには、そういう言葉が似合う。 そしてコーナーに入るたびに横Gが体に架かり、押し潰されそうになる。 (このタイヤがグリップする感覚。ドリフトなんかじゃ得られない横G。これでこそ真の走りってものよ!!) そう呟き、コーナーを立ち上がりと同時にアクセルを踏み込み、ミサイルさながらに加速していく。
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