125人が本棚に入れています
本棚に追加
以降もアウト・イン・アウト&スロー・イン・ファーストのグリップ走行で抜けるS15。
キャリィは相変わらずドリフトで抜けて行く。
(こんなふざけた走りをする奴に秀雄が負けた?それとも三味線引いてる?とっとと真剣になりなさいよ!!)
苛立ちを足に込めて350PSのシルビアを操る。
現代も過去の自動車レースにおいて、変わらぬ事がある。
速く走ること。
以前はタイヤのグリップ力は相当低かった。
コーナーでアクセルを踏めば一気にテールスライドを起こすしスピンする。
それを防ぎ、進入速度を高める技術としてドリフトは生まれた。
それから数十年はラリーでもサーキットでも車を横に向けて走っていた。
滑らした方が速かったからだ。
しかし、時が進めば技術も進む。
タイヤもハイグリップが巷に出回るようになり、ドリフトでは遅い走りしか出来ない時代になっていた。
ストリートではドリフトは健在、遂には公式、世界大会、映画でも取り上げられた。
だが、あくまでもパフォーマンスでの話し。
誰も速く走る為にドリフトをしてはいない。
悪く言えば自己満足のテクニック。
そういう考えが平坂巴にはあった。
彼女は無駄が嫌いだった。
だから彼女はグリップで峠を攻める。
タイヤもSタイヤを履き、サスペンションもグリップ向けのセッティングを施している。
無駄の無いマシンに無駄の無い走り。
彼女のシルビアと彼女のテクニックには、そういう言葉が似合う。
そしてコーナーに入るたびに横Gが体に架かり、押し潰されそうになる。
(このタイヤがグリップする感覚。ドリフトなんかじゃ得られない横G。これでこそ真の走りってものよ!!)
そう呟き、コーナーを立ち上がりと同時にアクセルを踏み込み、ミサイルさながらに加速していく。
最初のコメントを投稿しよう!