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一方、西浦はというと。 先程とは打って変わって真剣な顔付きで黙っていた。 またもコーナーが迫り、今度はアクセルを踏み込み、パワースライドでコーナーを抜ける。 (タイヤが食いついてきよったな。いよいよ本領発揮といくか) そう思っていると、またもコーナーが迫る。 後輪を滑らしてドリフトでコーナーを抜けていく。 だが、先程と比べてドリフトアングルが浅い。 カウンターも微々たる量しか切られていない。 コーナー出口に対して垂直になると一気に加速していくキャリィ。 その脱出速度は外からでもわかるほど先よりも速くなっていた。 (俺が単なるドリフト小僧だと思っちょるやろうが、こっからが本領発揮やで。タイヤの皮剥きも終わったしな) そう、大アングルかつ濛々と立ち込める白煙を撒き散らしたドリフトは新品のタイヤの皮剥きを兼ねて行ったもの。 決して真剣勝負に遊びを入れていたわけではなかった。 むしろ、より良い対戦状況にするための策だった。 程よく擦り減ったスポーツタイヤはスタート直後よりもグリップを増している。 (良い食いつき加減や…) そうこうしているうちに、二台は箕面中盤の難所のS字コーナーに差し掛かる。 このS字コーナーは一見、緩いコーナーが連続しているように見えるが、実は三つ目の左コーナーが微かにきつい曲線を描いており、直線的には抜けないように出来ている。 先行していた巴のS15は左側に寄り、右コーナーのクリップを取ると微々たる量で右にステアリングを回し、イン側ギリギリをかすめる。 少しスピードは落ちたものの左コーナーのクリップを抜け、クリアしていく。 (中途半端なコーナーね。一瞬迷ったわ) 続いて哲雄のキャリィもS字に差し掛かる。 だが、キャリィは右にも左にも寄らずに、ど真ん中に構えてS字に突っ込んで行く。 (何考えてんのよアイツ!?こんな中途半端なコーナーを直線的に抜けるって言うの!?抜ける訳無い!!) だが、巴の予想は外れた。 キャリィはS字を直線的ではなく、直線で抜けた。 路肩に乗り上げ、砂利をタイヤで巻き上げ、高いスピードを保ったままS字を抜けた。 (そうだわ!!普通なら舗装路のみで走る。だから直線的に走れないけど、路肩の未舗装部分を使えば直線で行ける!!なるほど…地元しか知らない裏攻略方って訳ね)
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