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その頃、大日駐車場。
ギャラリーしてた走り屋達が口々に話していた。
「さっき、中盤のS字にいた奴らから連絡あったけど後半に入ってもS15先行のままやと」
「さすがに今回は腕の良い奴やったんやな。前は800馬力のR32に新型GT-Rにも勝ったけど相手は腕は悪かったしな」
「でも哲雄も何も考えてはないやろ。多分、なんか作戦考えとるはずや」
「けど、後半の何処に抜けるようなポイントがあんねんな?」
「まぁ、確かにそやけどな。自称哲雄の一番の友の風太郎はどう思うよ?」
一人の走り屋が風太郎に声をかける。
だが、風太郎は自慢のカプチーノのフルバケットシートにもたれて目を閉じ、口からヨダレを垂らして爆睡していた。
((友人の真剣勝負中に寝るなや!!))
風太郎の姿を見た走り屋達は一同に口には出ない声で突っ込んだ。
話しは戻り箕面後半。
二台のポジションは変わらぬまま、後半最初の低速左コーナーへ差し掛かる。
二台共にブレーキランプを灯らせ、ブレーキローターを赤く染め、荷重を前よりに移し、前輪にグリップ力を与えて左へ舵を取る。
S15はグリップ、キャリィはドリフトと相変わらず。
だが、コーナー脱出時に巴は異変を察知した。
コーナー脱出時、わずかに後輪がアウト側へ膨らんだ。
(何!?タイヤのグリップが弱まった?熱ダレ?摩耗?こんな所で)
グリップの低下に焦る巴だったが、すぐに落ち着きを取り戻す。
(ダメよ!焦ったら!グリップが弱まっただけよ。それに軽トラの方が、もっとズルズルのはずよ)
そう自分に言い聞かせて、ふとバックミラーを覗く。
その時、巴は目を疑った。
何故なら、キャリィとのアベレージがコーナー進入前よりも縮まっていたからだ。
(な?なんでよ!?アイツは序盤からドリフトしてたのよ!!タイヤの摩耗はアイツの方が酷いはずなのに!?)
そう考えた巴だったが、ふと脳裏にある事が浮かんだ。
(そういえばアイツのタイヤ、新品並にキレイだった。アイツ、わざとスタート直後からドリフトしてタイヤの皮剥きして、今が一番良いグリップの頃合い。誤算だったわ。まさかアイツがそこまで計算していたなんてね。けど、もう抜くポイントは無し。このまま私が勝つ!!箕面の白虎も今日で終わりよ!!)
アクセルを踏みS15を次のコーナーへ向けて加速させる。
(後半に入って安心しきってる上に摩耗か…そろそろ仕掛けるか)
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