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ピッタリと張り付いたまま離れようとしないキャリィ。
それに焦るS15。
既に二台は8あるヘアピンの内、6を通過。
(あと2つ…あと2つ抜ければヘアピンは終わる。そのまま勝利を収められる。けど、いつアイツが仕掛けてくるか予測できない。気持ちが落ち着かなくてイライラする…)
予測不能の苛立ちが募り、集中できない巴。
7つ目の低速コーナーが近づく。
巴はコーナー手前で減速。
セオリー通りにアウト・イン・アウトでコーナーを抜けようとした。
(インを締めれば抜かれない)
だが、その考えは甘かった。
キャリィはイン側のラインを取らずにオーバースピード気味でコーナーへ突っ込んでいく。
(考えが典型的過ぎるで。インを締めたら…アウトはがら空きやないかい!!)
ガードレールを舐めるようにリアタイヤを滑らせてコーナーを抜けていく。
ガードレールと車体の間は1mm程度しか空いておらず、時折ガードレールと荷台のパネルから火花が飛び散る。
コーナーを抜ける頃には両車が並んだ状態になり最後の低速コーナーへ突っ込んでいく。
この時、奇しくもキャリィがイン側、S15がアウト側になりキャリィ優勢の状態だった。
(そんな…まさか!?)
巴は信じられないでいた。
スタート直後、かなりのアドバンテージを与えたキャリィに終盤で、それもセオリーから外れた走りで並ばれた事。
(…落ち着くのよ私。バトルの決着は最後まで分からない。最後の最後で抜き返せば良いのよ。馬力もPWRもS15が上なんだから)
二台並んで最終コーナーへ入り込む。
キャリィはテールを滑らせ、S15はグリップでイン側に付きコーナー立ち上がりの加速で抜き返そうとした。
だが、インに付きたくても付けない。
すでにS15のタイヤは限界を超えていたのだから。
慣性の法則に逆らえず、アウトへ流れていきカウンターを当てるS15を横目に遠ざかっていくキャリィ。
(…そんな…350PSのシルビアが、たった120PSの軽トラに負けた?)
敗北を認めたくない巴だったが、闇夜に映えるキャリィの赤いテールランプが、それを強く物語っていた。
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