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バトルを終えた二台は、阪急箕面駅のロータリーに止まっていた。
昼間はバスが軒を連ねているが、終電も過ぎればクルマは愚か人が一人も通らない。
駅の自販機で買ったホットコーヒー二本を携えて哲雄がバス停のベンチに座る巴へ近づく。
「ほれ、ワシのおごりや」
そういうと哲雄は携えていたコーヒーを巴に向かって投げる。
巴は、一瞬、「あちッ!」と呟いて飛んで来たコーヒーをキャッチした。
「…ありがとう」
缶コーヒーのプルタブを開けて飲みだす二人。
(はぁー。あったまる)
いくら冬は過ぎたとテレビやラジオで言っていても、まだ夜中は寒い。
温もったコーヒーが体の芯まで温めた。
(にしても、何でバトル吹っかけた私にコーヒー奢ったんだろ?普通ならそのまま帰るとか…いや、その前に何で私は抜かれたのよ?普通はアウトから抜こうなんて考えないのに)
「お前さん。なんで抜かれたか考えとるやろ?」
「え!?いや…ああ…うん」
様々な考えを頭の中で巡らしていた巴に突然、哲雄が話しかけ動揺した巴は下を向く。
「んなモン自分で考えろや」
「…そうよね」
哲雄の冷徹な答えに気を落としながらも賛同する巴。
走り屋をやる上で誰かに基礎的なテクニックを教わる事はあっても、さらに速く走るためのテクニックを教えてもらう事は皆無であり暗黙の了解。
特に対戦相手に敗北原因を教えてもらう事は走り屋の恥とも言える行いだ。
巴は恥を犯そうとした自分自身が情けなく思えた。
「と言いたいとこやけど今回は特別に教えたるわ」
「んん?はぁ!?」
先程とは一変した哲雄に驚いた巴。
その顔は驚きと不審に満ちていた。
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