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「お前さんが負けた原因パート1、スタート直後に先行したやろ?あれや」
「は?何言ってんのよ?先行して突き放せば…」
哲雄に反論する巴だったが、反論は中断される。
「あんな、後ろに付いとけば相手が、どんな走りをするか。コーナーをどういうふうに攻めるか。何を仕掛けようとしてるかが解る上に、パッシングして相手に揺さぶりを掛ける事も出来るはずや。それに後追いなら自分自身が追う側になるわけやから、自分が相手に追われてる感覚に襲われへんしな」
巴は哲雄の持論に不服を持つものの、正論である事もあるので納得し首を縦に振る。
「次にパート2。全部のコーナーをグリップで攻めた事。これはタイムアタックちゃうんやからな」
「いや、それはおかしいでしょ。昔ならともかく、今の時代にドリフトは非効率的だし、コーナー脱出速度も遅いし、タイヤの持久力も減らす。百害あって一利無しの走り方よ」
哲雄に正論に近い持論をぶつける巴だったが、それは軽くかわされた。
「せやから、バトルはタイムアタックと違うて、いかに相手との距離を縮めるか離すか、いかに相手の考える走り方を乱すかが勝利の鍵や。それにドリフトは全体的な見方やったら遅いかもしれんけどな、コーナーの進入速度はグリップよりも速い上に、タイヤにあえて負荷を与えて熱を持たせてグリップさせれる事も出来るし減速も出来る。それにドリフトが走りに向かへん言うのはサーキットでの話しや。ここは広くて大きなコーナーが主なサーキットとは違うて、狭くて角度がきついコーナーが連続する峠道やからな」
哲雄の論理に、また巴は首を縦に振る。
「そしてパート3、終盤でインを締めすぎた事。抜かれないようにするんやったら、センターにライン取ればええねん。特にアンタのS15はワイドフェンダー付けて幅広なっとるからセンター塞げば普通は抜こうにも抜けへんはずや」
その解説を聞いた巴は自らの取った行動が誤っていた事に気付き、頭を抱える。
「そして最後のパート4。アンタは特に重要な事を忘れてた」
「重要な事?」
「せや、走る者にとって一番重要な事や」
唾を飲み込む巴。
哲雄が発する「走る者にとって一番重要な事」とは何か。
それほど重要な事を忘れているとは思えないが、それが原因で負けたのなら、キチンと聞くべきだと考える。
一拍置いて、哲雄は一番重要な事を話し出す。
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