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180SXのドライバーは驚愕した。
普段、ノロノロと走っていて邪魔くさいと思っているあの軽トラが出力系統を改造した愛車と互角の勝負を繰り広げている。
その真実に驚きを隠せない。
ギアを上げて、速度を上げる180SX。
キャリィのドライバーは、その180SXを見つめる。
(それなりにテクはあるみたいやけど、ドリフトアングルは深すぎるし、シフトチェンジにしてもステアリングワークにしても雑やしムラが多いわ……次の中速左で終わらすか)
そう思ったキャリィのドライバーはギアを上げて180SXを追う。
本来はストレートで有利なはずの180SX。
だが、キャリィは180SXよりも速い速度でじわじわと近付く。
想定外の速さに困惑し、挙動が怪しくなる180SX。
後、少しでコーナーへ入る寸前。
突然、180SXが減速した。
その隙を逃さず、あっさりと抜かしていくキャリィ。
(なんやシフトミスか?つまらん終わり方になってしもたな)
あまりにも呆気ない終わり方にウンザリしつつ、キャリィのドライバー「西浦 哲雄」はアクセルを踏み、夜明け前の箕面から去って行った。
その後、180SXのドライバーは意気消沈したまま、路肩に停まり呆然としていた。
そんな時、彼の携帯電話が震え上着のポケットから取り出す。
小型液晶ディスプレイの文字を確認すると、即座に携帯を開き、喋り始める180SXのドライバー。
その話し声は哲雄に届くことはなかった。
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