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西浦の操るキャリィは、新御堂筋の軽快な流れに乗り、順調に北上する。
かと思われたが、現実は厳しい。
よりにもよって、江坂付近で事故が発生し、片側の車線が塞がれ渋滞が発生していた。
西浦は、その渋滞に巻き込まれた。
「…事故ってんじゃねえよボケが…」
進んでは止まり、進んでは止まりの繰り返しに、不快感丸だしの表情を浮かべる。
その表情をミラー越しに見てしまった前のクラウンに乗った中年男性が即座に目を反らす。
(あ…、顔に出てるか?)
不快感丸だしの表情を和らげるために、首を振り、両頬を上下に揉み、気を紛らわそうとラジオの電源を入れる。
両側のスピーカーから、流行りのガールズバンドの曲が流れ出す。
その曲のリズムが良かったのか、哲雄は首を小刻みに振り、ステアリングホイールに添えた手の指でステアリングをリズム良く叩く。
自然と強張っていた顔の表情が軟らかくなる。
「パーッ!!」
(んぇ!?)
突然、後ろからの音に驚いた哲雄。
振り返ると、VIP仕様のセルシオが居た。
音の正体は、このセルシオのクラクションの音だったようだ。
前を向くと、すでに前に居たクラウンが居なくなっていた。
哲雄が曲にノっている間に渋滞の列が進んでいたらしい。
少し慌てた様子でアクセルを踏み、キャリィを先に進める。
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