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数分後。
哲雄は自宅アパートに併設されたガレージ(プレハブ)に着く。
既に先客の「丸岡風太郎」のであろうダークブルーのスズキ カプチーノ(EA21R)がガレージの前に停まっていた。
哲雄はキャリィをカプチーノの横に付け、エンジンを止めて外に出る。
カプチーノに近づくと運転席で不機嫌な表情で膨れている楕円型の眼鏡を掛けた風太郎がいた。
「すまん!遅れた。新御が事故渋滞しててさ」
開口一番、哲雄は風太郎に謝罪と言い訳を語る。
「知っとるよ。バイト先のお客さんから聞いたし」
すでに察し済みだったようだ。
「でも遅れたことには変わりはないな」
風太郎は不敵な笑みを浮かべ哲雄に言う。
「スマン。後で飯奢るから許して?武蔵定食屋の特盛唐揚げ定食でな」
風太郎に奢る事を約束し、許しをこう哲雄。
「許可!!」
0.1秒で許した風太郎。
(現金なやっちゃな…)
風太郎の唐揚げに対する偏愛に呆れる哲雄。
「まぁ、とにかく。今からパーツ付けるから手伝ってや」
「お安いご用や、ちゃっちゃと終わらして箕面でダンシングオールナイトならぬドリフティングオールナイトやー!!」
「古ッ!」
そんなくだらない洒落を言いながらシャッターを上げ、キャリィをガレージの中に入れる。
ガレージに入ると風太郎が真っ先に黒い純正樹脂フロントバンパーを外す。
その後、壁に吊されているワンオフのフロント・サイド・リアバンパーを装着していく。
哲雄はキャリィから降り、屋根の鉄骨に備え付けた警戒色に塗られたエンジンクレーンを使い、荷台の屋台を外していく。
屋台を外すと、同じく壁に吊された二本の鉄パイプを取り出し、片方を荷台にボルト留めして、もう片方を運転席後方のパネルにボルト留めしていく。
この二本の鉄パイプ。
端から見れば単なる鉄パイプだが、これもワンオフで造ってもらったロールバー。
本来はコーキング剤や溶接を用いて接合する物だが、哲雄のキャリィは営業にも使うクルマであり、荷台にロールバーを接合すると業務に差し支えるのでボルト留めのみの簡易的な取り付け方にしている。
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