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「…………おば……さん、何時もの物を……お願いします……」
目の前には、今時入口何て物が無くてカウンターしか無く、奥に様々な銘柄の煙草の箱が並ぶ古びた小さな煙草屋。
そのカウンター越しにニコニコと優しそうな笑顔を浮かべる老婆に言った。
我ながらボソボソと喋っていて、凄く聞き取り辛いだろうと思うが。
「はいはい、ちょっと待ってね……おや、何処にやったかね……」
案外聞き取れるらしい。
見た目70代半ばと言った所なのだから、そろそろ耳が遠くなっても良いだろうに……昔からこの人は耳が良い。
そんな事を考えながら、レジの下をがさごそする老婆をぼんやり見つめる。
そしてがさごそは二分程続き。
「あぁ、あったあった……いや、歳を取ると物を何処に置いたか忘れがちになるねぇ」
「……後ろの、棚から……取れば……良いかと……」
「何時も言うけどありゃ箱だけの飾りだよ」
「……そう、でした……ね……」
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