序章

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そして、しばらく経った後、フードの男が息を切らせながら現れた。 「ふー。 やはり、俺を襲ったのは囮だったか…」 カチャ。 アルスが男の喉元に剣を向けた。 「やはり…だと。 お前は村がこうなるのを知っていたのか!」 剣先が小刻みに震えている。 男は息を一つ吐いて 「一応な… 俺は、イノファイスの密偵なんだ。 だから、お前さん達の村が襲われるのは、一応だけど知っていたんだ」 アルスの体がナワナワ震えていた。 「お前!! 絶対に許さない!」 そう言うと剣を男の喉元目掛け突いた。 ドスッ。 鈍い音と共にアルスが倒れた。 「危ない危ない。 もう少し、魔法詠唱が遅かったら死んでいたな(なんていう速さなんだ… 体が出来ていない子供があんな…)」 「うっ…。うっ」 アルスは悲痛な呻き声を出しながら泣いていた。 痛さと自分の弱さに… 「大丈夫か小僧? 立てるか?」 男は手を差し伸べた。 「うるさい!」 男の手を払って立ちあがったが、魔法の効果なのだろうか足下がふらついている。 「小僧… お前さんは力が欲しいか?」 「なんだ…よ 藪から棒に…」 「質問に質問で返すな! もう一度言う、お前は力が欲しいか?」 アルスは少し顔を俯いて 「ほ…しい。 力が欲しいです!」 男はニッと笑って 「そうか。 じゃあ、俺と一緒に来い」 「え? どこに?」 「決まっているだろ。 イノファイスにだよ。 それと、そこのお二人さんも来い。 これから、俺達は家族になるからな」
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