第一遍 右腕の黒猫 1

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「うーん、事件だ」 携帯電話を見つめつつ、唸る。携帯のニューステロップによると、この街で誘拐事件が発生したらしい。 しかも、数年前にも似たような事件が発生していたため、大体的に取り上げられているようだ。 うなーお。 先程から僕の足元には、黒猫が纏わり付いていた。 「うん、なんだい?」 携帯電話を操作しながら反応しても、黒猫は返事をせずに、ひたすら僕の脚に額をこすりつける。あまり人に警戒心を抱かない猫だ。 だがそれがいい。 「お腹が空いたのかな?」 僕は携帯電話をポケットに戻し肩に掛けていた学生カバンの中から、昼休みにおやつとして食べていたニボシの残りを取り出した。 余談だが、お昼にニボシを食べてる時に、やけに熱心にクラスメイトの御崎君がニボシを見つめてきて、ちょっと怖かった。 あげれば良かったのかな、と少し後悔していた。 んなー。 黒猫はニボシに素早く反応した。そして掌にあるニボシを数匹分、その場で貪る。しかし、全部食べきる前に掌から顔を離し、再びにゃーにゃーと鳴きはじめる。 まったく、猫というのは気まぐれで扱いにくい。かわいいからいいけど。 「うーん、お腹が空いたわけじゃないのか。じゃあなんだろう。……うあ、これじゃあ、買い物の続きができないじゃないか……」
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