第一遍 右腕の黒猫 1

4/17
前へ
/145ページ
次へ
僕は現在、母に用事を頼まれていた。晩御飯の食材の買い出しである。 「まったく。面倒臭いといったらありゃしない。……まぁ、仕様がないか」 高校生にもなっておつかいなんて……と思うが、今回は事情がある。 僕の弟は現在、流行りの風邪で病床に伏す身であった。熱は大したことないのだが、青白い顔で苦しそうに咳を繰り返す姿を思い出すと、胸を締め付けられる思いだ。 そして母はその看病につきっきりであるため、僕がこうして代わりに買い物を行っているのだ。 「んー、仕方がない。黒猫。悪いけど、君の欲求は解消できそうにないよ。早く買い物を済ませてしまうから、それまで待ってほしい」 僕は手の平に残っていたにぼし(黒猫が残した頭部を含む)を食べ終わると、しゃがみ続けて疲れていた脚を伸ばし、一度伸びをする。 「んっく……。よし、行こう」 目的の店に向かう。足には黒猫がもふもふと纏わり付き続けた。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加