第一遍 右腕の黒猫 1

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帰り道の途中、人気のない公園を通る。 この御園公園は、昔は近所の子供達(僕を含む)がよく集まって遊んでいたのだが、今では利用する者はほとんどいなくなり寂れてしまった。 その原因は数年前に起きた誘拐事件である。この御園公園が、その誘拐現場だったらしい。当時はまだ幼かった僕も、やはりその事件以降には、この御園公園には近付かなくなってしまった。 利用するのは、こうして自宅から商店街方面へ向かう時くらいだ。 「やっぱり、雰囲気っていうのかな、少し怖いね。黒猫、キミはどうだい? 何か感じたりするのかな」 猫が何もない空間を見続ける現象を思い出しながら振り返るが、黒猫はなんのとこやら、と凛とした顔で僕の顔を見返してきた。 「はは、なんだか頼もしいね」
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