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僕は黒猫を従え、街灯の少ない低木になぞった道を黙々と歩む。
土を材料にしたレンガ敷きの通路に反響する足音は僕のスニーカーのものだけで、他人の足音は皆無だった。黒猫の足音は肉球によってないに等しい。肉球最高。この時間帯になると、通路として利用しようとする人さえいなくなるのだろうか。
そんなことを考えていると、根拠のない不安感に苛まれた。なんだか、不穏で嫌な空気を感じる。
突然、黒猫が僕の脇をスルリと通り抜け木々の狭間に潜り込んでしまった。
「ん、どうしたんだい。何か気になるものでもあったのかい」
夕闇の影に塗り潰された茂みの奥を見据える。
ダメだ。暗くてよく見えない。
ふにゃーお。
木々にほの暗く隠された闇の奥から、猫の返事が返ってきた。
「仕様がないな……。鼠でもいたのかい?」
言いながら、両手の買物袋に気を使いつつ茂みに脚を踏み入れた。
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