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「初めての…キス??」
「うん。はじめてのキスって、どんな味がしたの??」
そう言って小首をかしげる。
二つに縛った髪が、ゆらゆらと揺れた。
「うーん…涙の味だったかな…」
そう告げるとさっきよりも難しい顔をして唸る。
「涙…??」
「うん…涙。」
「なんで涙??」
興味心身に聞いてくるその姿勢がかわいくて。
「その時、泣いちゃってたから。」
「なんかドラマみたいだね!!」
その言葉を聞いた時、あぁその通りだなって思った。
「まるで、ドラマみたいな恋だった…。」
「見計らったように、発車のベルがなったの…。」
ー初めての恋が終わる時ー
冷たい冬の風が頬をかすめた。
巻いた白いマフラーはそっと風に揺れて。
大丈夫、大丈夫と何度も自分に言いかけては、そんなことしかできない自分が少し情けなかった。
ため息をつくと、息は真っ白で。
「なんで手袋…忘れちゃったんだろう。」
小さくつぶやくと、吐いた息で両手をこすった。
ふと顔をあげると、街はイルミネーションで華やかに色づいて。
まるで魔法をかけたみたい。
裸の街路樹がキラキラと目にしみた。
どうしても言えなかったこの気持ち、必死に抑えつけて。
前から決めていたじゃない。
私なら大丈夫、そう何度もつぶやいて。
「これでいいの…これえでいい…。」
振り向かないから。
ありがと、サヨナラ。
何を伝えればいい??
切ない片思い、長かったから。
足を止めえると思いだしてしまいそう。
だから…。
ありがと、サヨナラ。
「泣いたり…しないからっ…。」
そう呟いて強く唇をかんだ。
溢れだしてしまいそうで、怖くて。
「泣かないっ…。」
それでも溢れ出してきそうな涙を隠して、上を向く。
ふわりふわりと、舞い降りてくる雪。
そっと、手を伸ばしてみる。
ひんやりと冷たい温度を残して、溶けて消えていった。
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