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「チェスター!」
カノンノが叫んだ。
彼女の声を聞いて、アイリスも何処かほっとした。その声には、さっきとは全く違う雰囲気が、…安堵と喜びに満ちているような感じがして。
青年―チェスターは、カノンノを見るなり顔を綻ばせた。
ついさっき、男たちに見せた挑発するような表情とはうってかわって。
「カノンノ!無事だったか…」
「ごめんね、心配かけて」
申し訳なさそうにちょっと顔を俯かせて言う。しかしチェスターは笑顔のままだ。
「気にするなよ、カノンノ。
……で、ちっと聞きたいんだが」
突然此方に顔を向けられて、思わず硬直してしまった。
だが、彼はそれを気にも止めず、
「カノンノ……こいつらは誰だ?」
と呟いた。
「初対面の人に向かって『こいつら』は失礼よ?
……難民なんだって」
「難民か…」
カノンノの表情につられてか、難しい顔になるチェスター。
アイリスには、『難民』という言葉が何をあらわすのかさっぱりだったが、勘違いされていることは理解できた。
「じゃあ、クラトスのところに連れてくか?」
「そうね。保護してあげないと……」
「あのー…ちょっと待ってくれないかな」
モルモが堪えかねてそう口に出す。と、チェスターが目を丸くした。
その視線は、モルモに向かっている。
「ペットが喋った!?」
彼の一言が、余計だったらしい。
「オイラはペットじゃないやいっ!モルモって言うんだよっ!
んで此方はアイリス!」
ペット扱いされたことに怒りつつ、きちんと此方にも話題を向けてくれる。
「えと…宜しくお願いします」
取りあえず、アイリスはぺこりと頭を下げた。
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