◇―プロローグ―◆

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《料亭 大和》 ジャーー… …カコンッ! 鹿脅し(ししおどし)の音が料亭内に鳴り響く。 庭が見渡せる座敷の部屋にはテーブルがあり、それを挟んで男女が向かい合って座っている。 男「ご…ご趣味は??」 着物を着た男が、緊張の面持ちで、同じく着物を着た女に質問をぶつけた。 女「趣味は…」 早坂「……(ゴクリッ)」 男…早坂は生唾を飲み込み、女の返事を待つ。 女「趣味は…」 早坂「しゅ、趣味は?」 女「趣味は、総合格闘技の観戦です!!」 早坂「そ…総合格闘技??」 意外な答えに、早坂は聞き返した。 女「分かりません?総合格闘技…実は私、最近は観るだけじゃなくてジムに通って闘い方も習ってるんです!」 早坂「は…はぁ…」 おしとやかなイメージを勝手に抱いていた早坂は、完全に引いてしまっている。 早坂「ど…どんなことをジムで習うの?」 女「あ!良かったら1つ技をかけさせてもらっていいかしら?」 早坂「…えっ?」 ジャーー… …カコンッ! 早坂「ぎゃああ~~~ッ!!ギブ、ギブ、ギブ!!」 一瞬にして腕を決められた早坂は脂汗を垂らしながら、あっさりとギブアップした。 女「え?…もうギブアップですかぁ?」 早坂「ま…まぁ、ブランクがありますからね…ハハ…」 技から解放された早坂は、そそくさと荷物をまとめると… 早坂「し…失礼します!!」 …一目散に料亭を飛び出して行った。 女「ちょ、ちょっと待って下さいよ~!どこ行っちゃうんですかぁ~??」 早坂「(…あ~…何で俺がお見合いしたら、いつもこんな展開になるんだ~!)」 女の呼び止める声を背中で聞きながら、早坂は心の中で嘆いた。
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