悲愴

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悲愴

頬を涙が転げ落つ 真冬の夕暮れ 空はどんよりと曇り果て 涙の中に反射する   君探したもう 記憶の中の君 夕暮れは物哀しきて 我の心切り裂きつ   涙 ほとぶ夕暮れ 意味無く…… 止めど無く 潰れる心 悲鳴 上げつつ……   あゝ あのアカシヤの あゝ 刺に刺されたなら 心はどんな 楽だらう 我が身を刺し貫いて 移し世の この身から自由になれたなら…… あの世は遠くに在りにけり 君の幼き 柔けり 優しき頬に…… いつも触れて居らるれば 我が心 自由になりにけり 大蒼空を舞う 鳶の群れのよう 涙など流さずに済むものを……   愚かな衆中は 騒ぎたて 憧れとともに 蒼空を見上げ 夢などすべて 沼地に捨て去り その想いを 埋没さする……   我は 吾子を抱きつつ その頬に 触れていつ 吾子は 見知らぬ地へ 旅立ち 我が心 微塵に切り裂かれつ……   吾子を 此の手に抱けぬなら 我の存在意義なぞ無し 我を見て 柔に微笑む幼き笑顔 その存在が我を助く……   あゝ 涙が転げ落つ あゝ 涙がほとぶ あゝ 淋しさが切り裂く あゝ 夢が消え去る あゝ 我が命 存在意義無し あゝ 吾子を抱きたひ あゝ 我は母親なり……   我が悪しき事をしたのなら 喜びて 罰を受けよう 我が 何かしたのなら 喜びて 罰を受けよう   判らない 判らない 我が何を行い 何を想うのか 判らない 判らない 唯 判るのは 幼き吾子の笑顔のみ……   誰そ 愚かなる我を 誰そ 愚かなる我に 誰そ 愚かなる罪を 教えてたもれ……   我は此の様な厳罰を 何故受けねばならぬのか   誰そ 愚かなる我に……   教えてたもれ……
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