刺薔薇姫―いばらひめ―

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枯れ果てた森の奥に ひっそりと咲き誇りし 刺薔薇 淋しげに咲き誇る様は 夢見る事を忘れし人間(ヒトガタ) 時は遠に止まり果てん 終焉(おわり)を迎えたこの世の果て 夢なぞ何の役にも立たず 哀しみだけがこの世を包まん 人が暴虐の限りを尽くし 人がやりたい放題暴れ 総てを奪い尽くし 踏み潰し 傲慢の限りを尽くしし その果てに 時は進めし事を辞めん 刺薔薇に姫を包んで…… 永久(とわ)の眠りに就いた この世の果て…… 人の心は 簡単には変わらない それが病気なら余計変わらない…… 傷付き悩みし 一度でも 絶望の縁を見た人間(ヒトガタ) 墜ちて行く……堕天使の様に…… 翼を折られし天使 終焉(おわり)を見て終いし人間(ヒトガタ) 墜ちる果ては 奈落の底か 悪魔の楽園か いずれにしても ろくな事は無し 一度 此の胸に深く刻まれし恐怖 紅き血を流し続けし 刺薔薇姫 その表情(かお)は安らぎにも似し 淡き微笑を湛えたもう…… 刺薔薇姫は もう死に絶えん 此の世も もう死に絶えん 何も残らぬ儘…… 暴虐の限りを尽くしし人間(ヒトガタ)は去り 此の世の塵と成り果てる…… 何事にも筋道が有る 思い込みは自滅を招く 視界が広過ぎたら道に迷う 信念が強過ぎたら 心が折れる…… 総てを否定しない 刺薔薇姫 総てを否定する 刺薔薇姫 中庸であるが肝心 清らかな水をその手で救って さあ 乾いた喉に 流し込むが良い……
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