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うちの母はちょっとおかしくなっていた時期があった。
理由を聞いて納得したが、当時子供な自分には解らなかった。
それが私にも教えられたキッカケは兄の大学進学のときだった。
兄はそこそこな評判で、私とは違い頭が良かった。
授業で寝ることはしばしばあったそうだが、家で復習すれば大抵はわかり、やる気のない授業態度とは裏腹に学年では上位の成績だったらしい。
と言っても一桁とかでなく、30前後ですが、クラスが多かったので、それでも上位は上位だった。
きっとそれは両親や共に暮らす母の母(つまり祖母)にとっても嬉しいことだった。
小さい頃からブラコンだ、とからかわれた私も凄く嬉しくて誇らしかった。
が、大学の入学金を払うときに問題は発生した。
母が、入学金を使い込んだ挙げ句、借金までしやがったのを自白したのだ。
父と祖母の仲は険悪だったので、ストレスから浪費しまくったらしい。
なかなか言えなくて嘘を突き通した挙げ句、直前に言いやがった。
そのまま母が話せば、祖母と母は険悪な状態になる。
けど、大学進学も断れない。
兄はその大学に学校側が推薦したたった一人の生徒だ。
内定貰った今さらぶち壊せば兄の母校は今後二度と推薦枠は与えられない可能性すらある。
そこで、結局は事情を話して祖母にお金を出してもらうことにした。
ただ、唯一嘘をついたことがある。
――すべてを、父がしたことにして、離婚することにした。
父は母を愛していたし、兄も私も、愛していた。
後に父はそのときのことをこう言っていた。
「俺は高校も行かせて貰えなかったけど、お兄ちゃんには大学くらいいかしてあげたいんだよ」
そして、一人家を出た。
ちなみに、なんでこんなこと書いたか、ってちゃんと理由ありますよ。
私の時もやらかしたんですよ、あの母ちゃん。
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