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学校の玄関前で、俺達はぽけーっと突っ立っていた。だもんで、他の生徒は迷惑そうにしている。
品行方正な俺は、その視線に耐えられなくて逃げ出そうとした訳だが、何でか姫子と康介が俺の腕を掴み、逃げさせてくれない。
そんな俺達を、穏やかに見つめる神谷先輩。同性の俺でもドキドキする程、端正で色気のある顔立ち。
「突然ごめん、少し話したい事があるんだ。放課後、時間あるかな?」
あぁ、何て甘い声だ。同じ人間とは思えないや。なんて事を考えていると、姫子はやや小さな声で「はい」と返事をした。
「ありがとう。じゃあ放課後、屋上で待ってるよ」
神谷先輩は天使も顔負けのスマイルを浮かべ、踵を返した。
自信に満ちた足取りで、先輩は校内へ消えて行く。
その後ろ姿を見つめながら、姫子は俺の横っ腹を肘で突いた。
「……びっくりしたぁ、何あの顔。やたらかっこ良いし。それとあの声、やたらエロいし。何か、下半身熱くなってきたわぁ」
そう言って、うふふと笑い出す姫子。続けて、康介もへへへと笑い出した。
俺はというと、全く笑えなかった。どう考えても、今まで聞いた姫子の下ネタの中で、一番つまらない。
「勝手に言ってろ」
俺は二人を両手で引き離し、一人で校内に進んだ。
「ちょっ、ちょっと幸成! 待ってよ!」
姫子が走り寄り、俺の腕をぎゅっと握り締める。
振り払った。力の限り。
「触んな、エロ姫」
そのまま後ろを振り返る事なく、俺は教室へと歩き続けた。
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