姫子と俺

3/6
2009人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
   小学一年の時に『セックスって知ってる? 男と女が裸で抱き合う事なんだよ』って言われた事も、中学二年の時に『何と綺麗な平城京』をぶつぶつと反芻していた俺に、『違うよ幸成、何と綺麗な潜望鏡だよ!』って言ってきた事も、その他もろもろみんな覚えている。  一体彼女は、どうしてこんなに下ネタ好きになってしまったのだろうか?  小学校に入学したての頃、彼女は交通事故に遭って頭を強く打った。まさか、その時の後遺症なのか? それとも、源ちゃんの悪い所を受け継いじゃっただけなのか? それともそれとも……。  毎朝の日課である姫子分析をしていると、一階から「幸成! 姫ちゃんが迎えに来たよ!」と、母ちゃんの声が聞こえてきた。 「今行く!」  俺はそう言いながら、急いで鞄に教科書を詰め込んだ。  駆け足で階段を下りていると、玄関先で、姫子と母ちゃんが何やら談笑しているのが目に入った。 「それで幸成ったらねぇ――」 「――あはっ! マジっすか? 幸成そんな事言ってたの?」  二人が俺の事を見ながら、ニヤニヤと喋り続けている。俺はそれを遮る様に、「はいはいはい!」と階段を一気に駆け降りた。  
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!