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振り払う様にぶんぶん手を振ると、姫子は悪戯っぽい笑みを浮かべて、嬉しい様な恥ずかしい様な、やっぱり嬉しい提案をした。
「ねぇ幸成、このまま手を繋いで学校に行こうよ?」
大きな瞳をキラキラと輝かせ、「ね?」と付け加える彼女。
しょうがないな――なんて言える訳もなく、俺は強引に手を振りほどいて「やだ、暑苦しい、さっさと行くぞ」とすたすた歩きだす。
「あら、冷たいお方」
そう言って姫子は、駆け足で俺を追い抜き、勢いよく体をターンした。
ふわり。
艶のある綺麗な黒髪と、短いスカートが、風に揺れて同時に舞う。
見えそうで見えないチラリズム。小さく舌打ちをする俺をニヤニヤと見つめ、「さっさと行くぞ、むっつりスケベ、プラス短小」と姫子が言った。
「見た事ないくせに。つーかお前口悪すぎ、だから男出来ないんだよ」
「見た事あるもん」
「ガキの頃だろうが」
「ううん、この間幸成が昼寝してる時に――」
「あー、あー、何も聞こえません」
耳を塞ぐ俺を見て、彼女はケタケタと、本当に楽しそうに笑った。
下ネタ大好きで、口が悪くて、けれども可愛くて、笑顔が眩しくて、何だか憎めない。それが彼女――相澤姫子。
通称エロ姫だ。
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