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「はぁ……アレ、ドキドキするぅ」
そう言って姫子は、自分の左胸をもみもみと揉んだ。
反射的に、俺の右手が姫子の額を叩いた。
「揉むな!」
額を摩りながら「お、おうよ」と姫子が呟くと、康介は手を叩いて喜んだ。
「やっぱ石田っちとエロ姫はいいコンビだよ。いい加減付き合っちまいなよ、お前ら。高二の夏、さらば童貞、さらば処女」
俺が童貞だって事はさておき、何故お前が姫子の事を知っている?
激しく気になった。
口をパクパクして姫子と康介を交互に見つめる俺と、頬に手を当てながら「つきあう、つきあう、つきあう」とぶつぶつ呟く姫子。
やがて姫子は、真剣な眼差しで俺を見つめ、一言。
「う、うちら突き合う!? 激しく突き合っちゃう!?」
――再び俺の右手が、彼女の額を捉えようとした正にその時である。
「相澤姫子さん」
馬鹿三人の目の前に、突然一人の男が立ち塞がった。
「……はぁ、そうですけど」
やや戸惑った様に、姫子が返事をする。無理も無い。突如現れたのは、学校一のイケメンと名高い、神谷先輩その人だったのだから。
顔良し性格良し、頭良し運動神経良し。おまけに、父親が大会社の社長さんときたもんだ。
何から何まで良し尽くめ、そんな先輩の下の名は、ずばり良介だったりする。
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