離脱

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 幸せは、誰が決めるのだろう。  不幸は、誰が決めるのだろう。  中学一年の冬、私は、それが誰が決められるものなのか、分かった。  幸せは、他人が決めることは出来ない。学校の先生でも、クラスの友達でも、兄弟でも両親でもない。神様でもなかった。  薄暗い部屋のなかで、涙で歪んだ視界に飛び込んだ自分の腕は、醜い痣を作っていた。蹴られた腹が痛くて、踞りながら、嗚咽を漏らす。  小さく咳をして、声を押し殺しながら泣いた。  すべてを遮断してしまいたかった。  産まれてくることを、もし選べたとしたなら、こんな現実が待ってると知れたとしたら、絶対に産まれたりなんかしなかった。  それが出来なかった私は、こうやって醜く生きている。  あの人が言ったように、産まれてこなければ良かったのだ。 _
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