離脱

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 学校は、とても憂鬱なものだった。  私は、小学生の低学年から苛められていた。苛める理由なんてものは、何でも良かったし、なくても良かった。  たった一人のからかうような行動が、芋づるのように真似をする人ができ、それは簡単に広がっていく。そして、悪意のないような笑顔で、平気で人を傷付けるのだ。  苛められる相手なら誰でも良かったのだろう。それが、彼等、彼女等にとっては至福であり、高級な遊びだったのだと思う。 「こいつ、汚い」  幼い彼の一言が、クラスに響く。  私はわけもわからず、疑問をもった顔で彼──光くんの顔を見据える。彼は、私よりも背が低く小柄で、瞳の大きい子だった。  彼の大きな声で、小学生──低学年ならではの好奇心に彼と私の周囲に人が集まる。  一人の男の子が光くんに話し掛ける。彼に理由を訪ねたようだったが、光くんは私の何が汚いのかを言わずに、クラス中に聞こえるように、こう言った。 「こいつ、汚いんだぜ」  悪戯に笑う光くんの一言によって、私の人生を狭くさせて、苦しいものに変えた。  彼の名前を、私は生涯忘れることはない。 _
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