嵐のSeptember

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「……あ?」 今時珍しい黒電話の受話器片手に、素っ頓狂な声を出す俺に、原因を作った張本人は何も無かったかのように同じ言葉を繰り返した。 「だからよ、お前明日うちに来い」 そう言ったっきり、電話の切れる音。言いたいことはいくらでもある。 「久しぶりの孫に対して他になんか言うことないのか」とか、 「おま、ちょっそれ短絡的過ぎね?」とか。 俺がもしもしと電話に出て、ものの十数秒で終わった会話を思い出してみても、全く理由が見当たらない。 今呆気に取られて立ち尽くす間にも、 「俺、なんか悪いことしたか……?」やら、 「明日とか普通に授業なんですが?」などなどエトセトラ。 愚痴りたい気持ちを抑えて、ツーツーと鳴り続ける受話器に、最後に一言、 「あ゛?」 と漏らした後、力いっぱい叩きつけることでしかこの苛立ちを発散することは出来なかった。  ★ ★ ★ ★ ★ ★ 電車に揺られて数時間。その後バスに乗り換え、明らかに人が多く住んでいる町から離れて行き、もう窓から見える景色は木ばかり。 乗ってる客も俺の他に最前列に座るおじいちゃんと、ちょうどその斜め後ろに腰かける女の子の三人だけ。 つまらないことこの上ないわけで。ずっと同じ体勢だから体痛いし……こんな辺境までわざわざ足を運ぶ自分に拍手をあげたい。
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