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お湯の水
音楽の情報を得るなら最も適した場所だ。
電車で向かう道中俺は確か智とずっと会話していたはずだ。そりゃそうか。会ったばかりの女の子と親しく話すなんて、チェリーボーイだった俺には無理だったな。
「智ーあと二駅で着くからな。齋藤さんと安岡さんもね。」
『はーい。』
皆揃って元気良く返事をする。
一瞬子守りをしているような感覚に襲われる。
駅に着いた瞬間、智と由香里が元気良くホームに飛び移る。
綾子は、どんくさいな。
モタモタ学生鞄をいじっている。
「………。あのー、安岡さん?降りるよ?」
『あ、うん!』
本当こんな女のどこが良かったんだか…。
可愛くねーし、足太いし、乳にばっか栄養いっちゃって頭悪いし。
俺、乳興味ねーしな。足太いのは好きだけど。
そう、この駅から店に向かう間に俺は綾子に連絡先を聞いた。
多分この頃から気になってた。
連絡先を交換して、それだけで一日が充実したように思えたんだ。
「あのさ、安岡さん。連絡先聞いておいても良いかな?ほら、これから何かと連絡しなきゃならない事もあるだろうし。」
確かに俺はこう言った。
そうやってわざわざ言い訳つけて連絡先聞いたんだ。
『うん、良いよ!』
あの頃の一番最初の綾子のメールアドレス。
全然覚えてる訳ないのに、見ると懐かしい気持ちになる。
この日から、俺は綾子に毎日メールを欠かさずに送り続けたんだ。
そして21歳の俺は、この世界から帰りたくないと徐々に、無意識に望むようになった。
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