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「…だーっっ!!どうでも良いけどいつ帰れるんだ、コレ。」
実際の所今の生活に不満はない。過去の世界に自分の脳内はそのまま戻ったのだから。勉強は間違いなく出来る。
高校生の数学やら英語やら、全く大した事ない。
周りに自慢できるくらいだから気持ちが良い。
だけど不安な点がいくつか浮かび上がる。
綾子と経験してきた全ての事を再現出来ている訳じゃない。
言ってしまえば、たった一文字メールの打つ内容を変えただけで、俺の知っている未来と変わってしまう可能性があるという事だ。
二つ目は、俺の精神だ。俺がタイムスリップした世界に無理矢理仮定を付けるのであれば…
今まで生活していた21歳の世界そのものの時間が遡り、何らかの理由により俺の精神のみが21歳のまま残った。
あるいは、脳では理解、確認できない程の時間で分割された世界が無限に存在し、その中の一つに俺の精神が移動された。
つまり、現在、一秒前の地球、二秒前の地球、三秒前の地球…と無限に存在し、そのなかでたまたま六年前の地球に精神が移行してしまった。
前者にしろ後者にしろ、問題は発生する。
前者であれば、過去の俺の体を支配しているのは21歳の俺の精神なのだから、21歳の体には15歳の俺の精神が代わりに入っていてもおかしくない、しかし未来が変わる可能性が高い。
前者ならまだしも、最悪なパターンは後者だ。後者は無限に存在する地球の中に21歳の俺が入ってしまった訳だから、今から六年後の世界には当然俺は存在していない、消えてしまった事になる。そして、この世界には2人の石田 優一が存在する事になる。だとすればもう一人の俺はどこに行ってしまったのか。現状を見れば今まで高校生活を営んでいた事は間違いない。
現段階では前者なのか後者なのか判断する事は不可能だ。
という事は、何とかして現状を理解し、帰る方法を探すしかない。だが、現状が理解出来ないのだから、とりあえず俺は未来が変わらないように自分の記憶を遡れるだけ遡り、それに忠実に従って行動するしかない。
どうしようもないという事か。
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