-もう一人の自分-

4/5
前へ
/55ページ
次へ
『俺が出会ったアイツは、今の俺じゃ想像もつかない格好してた、長髪で、裏原系の服装だったな。』 俺は食い入る様に大野の顔を見つめた。 『名は藤村 陽介(ふじむら ようすけ)と名乗っていた。』 「それがわかんねぇ、何で名前が違ったんだ。」 『どうやらアイツも以前までは大野 明史として生活していたらしい。だが、ある日を境に生活していた環境が変わった。本人の意思ではなく、朝起きたら、勝手に…。』 「そのある日ってのが…。」 『そうだ、9月1日だ。』 そして大野は続ける。 『そいつは朝起きたら藤村陽介になっていた、全く生活した事のない場所、全く知らない人の連絡先、当然あったのは大野 明史としてのそれまで生活していた記憶だ。』 「じゃあ、その…お前の顔をした藤村君は俺の事も知ってるって事か?」 『そういう事になる。』 「じゃあ、それまでに生活していた藤村 陽介の精神はどこにいったんだ?」 『それが、不思議な事に、全く知らない人の連絡先ばかり入った携帯だったのに、全員の顔と名前が一致して頭に浮かぶらしい。そいつの性格やら、どんな付き合いなのかも全て正確に。』 「それは…精神が融合したと考えるのが普通か…?」 『それしか考えようがねぇな。』 「あーもう訳わかんねぇ。ちょっと整理させてくれ。」
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加