0.日常茶飯事

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0.日常茶飯事

   高校生になって、一か月が経った。朝の支度も慣れて、コンタクトをはめるのも早くなった。お父さんの朝ご飯を作って、教科書を詰めて、自転車を跨ぐ。  交差点で止まっても髪を整えたりしないまま、学校の駐輪場に自転車で突っ込んだ。勿論、周りを確認して知り合いだけを狙って。  声を出さなかったのに、自転車の音だけで見事避けられた。相変わらず聡いやつだ。 「危ないじゃない馬鹿っ!」 「どうせサボるなら理由を作って差し上げようかと。おはよう上田っち」 「怪我も病気も無いから“サボり”なんでしょうが! チカぁ!」  声を荒げる黒髪ショートのミニスカ女子高生。何かが間違っている彼女が、私唯一の友人、上田裕子。  気配の察知、間違い探しの天才である彼女に自転車で突っ込んで、避けられ続けて二週間。彼女の察知能力は正しく才能だった。いや、それは小学生のときから知っていたことだけど。  自転車を降りて鍵を掛けると、彼女は鞄を持って待っていてくれた。 「今日は何時からサボるの?」 「先生が気を抜いて目を離した瞬間に、逃げてみせましょう」 「才能の使い方絶対間違えてる!」  運動神経と才能が間違った方向に開花した結果が、こうして先生を毎日困らせている。彼女曰わく、人として間違えていなければ構わないらしい。  その優しさに、私は救われている。  
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