0.日常茶飯事

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   私の現状を一言で言うならば、イジメの対象という言葉が一番ぴったりくる。その対象と仲良くしてくれる彼女は、私の希望、タフな精神の持ち主だ。数人に囲まれてしまったこともあったし、足が横から出てくることも少なくない。それでも、人として間違えていなければ構わないと笑う彼女に、救われている。  教室に入ると冷たい視線が私たちを刺す。悪意、嫌悪、侮蔑、裸の感情が向けられる。 「まだ学校に来るの? 化け物の癖に」 「ここは人間がくる場所だってのに」 「凄ぉい。まだ居場所あるとか勘違いしてんじゃない?」  向けられる言葉に、足が竦みそうになる。私は化け物。それが彼らの言い分であり、私を迫害する理由だった。  母親譲りの茜色の目に、怪我がすぐ治ってしまう体質。彼らは、それらが気味の悪い化け物の特徴に見えたらしい。  投げられる消しゴムのカスや、紙屑の嵐。避けるたびに増えていく罵り。  毎日毎日、やっとの思いで席に着く。鞄を机に掛けて、わざとらしくブレザーを脱いだ。  彼らは先生の目に見える方法をしたくないから、机や椅子に悪戯はされない。私は脱いだブレザーをわざとらしく叩(はた)くことで、全然気にしていないと伝える。そして、またブレザーを着て彼らに微笑んでみせた。 「死んでいたかもしれないことを繰り返すあなたたちの方が、よっぽど化け物じゃない?」  
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