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「朝七時半、登校」
まるで日記帳へと書き込むようにぼそりと呟く。
時刻は七時二十分。
次のプロセスへと移るために、脳と体を少しずつあっためておく。
家庭用電気製品が突然負荷を与えられればショートするように、体だってショートやオーバーヒートはするのだ。
言い訳がましく何ごとかと考えながら、鏡の前に立って全身に目をやってみる。
スカートは今日もひらひらで、やぼったい制服のリボンは、今日もぴんと伸びている。
いつも通りの日常。財布の中に保険証と生徒証。
いくらかの金額が入っているのを確認してから、鍵を持って玄関へ。
「行ってきまーす」
誰もいない家に律儀な挨拶を残して、登校。
玄関に置いておいた鞄を持って出発した。
がちゃりと、扉を開けた瞬間のつむじ風に髪の毛をぐしゃりと崩され、ぶぅっとほっぺを膨らませる。
髪の毛を整えながら歩いている横をとおりすぎる風が、無邪気に流れて草木をさざめかせる。
ふとした違和感に歩みを止めて、秋入り口の、青々とした空を見上げる。
空と雲がこんなにも遠く、集まり固まった雲は青い海をぷかぷかと浮かんでいる。
風は心地よく吹いており、やや暑い今朝の気温をかき消してくれる。
もう、季節の足音が聞こえてきた。
そっか。と小さな納得が芽生えた。
今日という日は、幸せと言うのに十分なものだったんだ。
小さな納得に、うぬと頷いて、歩き出した。
今度は小さなスキップで。
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