序章

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 どうしてこんな事になったのだろうか。考えるときりがない。  とにかく俺がやれるのはどうにかして彼等と逃げ延びる事だ。  何から逃げるか?決まっているあの恐ろしい『悪魔』達からだ。  昨日の明け方頃だった。  当然の如く寝ていた俺は酷い痛みによって起こされた。  足に激痛が走る為、上半身を起こし、足を見ると妹が俺の足に噛み付いている。  妹が顔を上げた瞬間、俺は恐怖に顔を歪め妹を突き放した。  いや、妹とは呼べなかった。  赤く鋭い瞳に浅黒い肌。裂けた口に尖った鼻。鋭い牙に長く先が別れた舌。  その姿はまるで悪魔の様だった。  恐怖の為か声がでない。どうすればいい、逃げるか。  ふと目に入った。今年、妹の誕生日に上げた髪飾りが、俺を睨んでいる悪魔の頭に着いていた。  足の痛みが増してきた。考えようにも痛みが邪魔する。  俺はパニックに陥った。無我夢中に家を飛び出す。  階段を下りると、半壊していたのが気になったが、なんとか外へ繋がる扉の前まで到着し、扉を開けた。  そこで俺が見たのは絶望感溢れる光景だった。
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