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「お、おい! 圭吾!」
圭吾は何も言わず、校門へ向かって突き進んでいく。
後ろに振り返れば、部員達と其田が、半ば呆然としたような表情で見送っているのが見えた。
腕を掴む手に力が込められ、幸春は痛みに眉を寄せた。開放されたのは、校門出てすぐだった。
痛みと突然のことにねめるように圭吾を見据えれば、彼は無表情で見返してくる。
「お前な、なんだよいきなり」
「帰ろう」
「っだから!」
「ねえ、ユキちゃん。……一緒に帰ろう?」
不意に圭吾の眉が下がり、縋るような視線が寄越される。
幸春は大きく嘆息すると、圭吾の肩を軽く叩いて歩き始めた。――この視線にはどうしても弱い。
それでもやはり不機嫌さは拭えず、圭吾が何度も横目でこちらを見ていたが、幸春から声をかける気にはなれなかった。
それに耐え切れなくなったのか、圭吾が間近に顔を覗き込み、「ごめんね?」と情けない声を出す。
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