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圭吾は肩を離して、一歩先を歩き始める。
「毎日来るの?」
「ん、まあ、大体」
「……夏休みから?」
「ああ」
なんとなく、責められているような気がして、幸春は圭吾の背中をじっと見据える。
そういえば圭吾には、其田のことを一度も話していなかったと、そのときになってようやく思い至った。
圭吾は踵を返し、後ろ向きに歩き続ける。
「さっきは、なに話してたの?」
「なんか、もうすぐ終わるから、お礼がしたいって相談されてたんだ」
「一緒に買い物行こうとかって?」
圭吾がなにを言いたいのかが分からず、幸春は歩みを止めて彼を見据えた。圭吾も足を止め、笑みを浮かべたまま小首を傾げる。
「ごめんね? 詮索しすぎた?」
幸春が首を振って見せれば、圭吾は笑みを浮かべたまままた背中を向けた。
「そのだ、さんね」
まるで確認するかのような口調に、幸春は再び圭吾の背中を見つめる。
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