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校門を出たところで、ようやく幸春の腕を解放する。余程痛かったのか、幸春は腕を振りながら、ねめるように見上げてくる。
「お前な、なんだよいきなり」
「帰ろう」
「っだから!」
「ねえ、ユキちゃん。……一緒に帰ろう?」
縋るように見つめれば、眉間の皺を深くしていた幸春が、大きく嘆息した。
肩を叩かれて、幸春が歩き始める。圭吾はその横を歩いて、横目に彼を見つめる。
真っ直ぐに前を見据えて歩く幸春は、やはり怒っているようだった。普段の穏やかな雰囲気を、その横顔から感じることが出来ない。
圭吾は横から、幸春の顔を覗き込む。
「ごめんね?」
どれだけ情けない顔をしていたのだろうか。視線の合った幸春は瞬き、呆れたように苦笑した。
「明日、先輩達に会ったら謝っとけよ?」
肩を落とした幸春に、「うん」と圭吾は一笑する。幸春は苦笑を深めていたが、それ以上はなにも言ってこなかった。
お互い無言のまま暫く歩き続け、圭吾はいつものように笑顔を浮かべながら、幸春の前に進み出た。
「さっき話してた子、誰? 見たこと無かったけど」
「さっき? ――ああ、其田さんのことか?」
「そのだ? おんなじクラスじゃないよね? なんで一緒にいたの?」
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