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ラップ音はやむことを知らない。
今、彼はクローゼットの隅に隠れている。
扉は固く閉ざされ、クローゼットの中は真の闇に溶けていた。
(れ、冷静になれ俺。こ、こんなことあるわけねえだろ。あ、あれだ。小さな音にも過剰に反応しているだけだ。そうだ。きっとそうに違いない)
と、自分に言い聞かせる東条。
少しは気持ちが落ち着いた、と実感した直後、
--ペタッ
と、張り付くような足音が東条の鼓膜を揺らした。
この家に居るのは東条悠護ただ一人。
ほかに人などいない。
東条は身を丸くして座り込んでいるのだから足音などするはずがない。
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