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“霄”
貴方にそう呼ばれると、
僕はそれだけで幸せでした。
幸せ、だったんです……。
貴方をお慕いする気持ちは、
あの頃から何ら変わりありません。
僕は貴方にお仕えし、
側近としての命を受けた、
あの桜散る小春日和の温かな春の日、
僕は17の生まれ月から1ヶ月遅れて、
この蓮條寺の赤い鳥居を潜りました。
僕は貴方の誇れる側近であるように、
ずっと、ずっと……
今日まで心掛けてまいりました。
不思議ですね……。
ずっと、それが僕の誇りだったのに……、
貴方に“優秀な側近だな”って、
褒めて頂けるのが、
僕の喜びだった筈なのに……、
今でもそれは、
僕の誇りである筈なのに……、
なのに、
それと同様に痛烈に胸が痛みます。
何時から、この心は……
この様な感情を持ち合わせてしまったのでしょう?
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